というと、隆夫は、なるほど、そうかそうかと合点して、ややおとなしくなった。しかし名津子の目がさめたら、すぐ自分のところへ知らせること、そしてすぐ自分を病室へつれていって名津子にあわせることを、くどくどとのべて、三木に約束させた。
三木は、このときになって、拭《ぬぐ》い切《き》れない疑問を持つに至った。
(どうも隆夫君の様子がへんだぞ。なぜ今日になって、姉に会いたがるのか、さっぱりわけが分らない。昨夜の実験の結果、急に姉に会う必要が生じたのかしら。それならそれといいそうなものだが……。なんだか隆夫君までおかしくなって来た)
隆夫は、三木の勉強部屋へ通された。
しかし彼は三木に向きあったまま、急に無口《むくち》になってしまった。なにかしきりに考えこんでいるようである。ふだんの明るい隆夫の調子は見られない。
そこで三木は、話しかけた。
「昨夜、電波収録装置《でんぱしゅうろくそうち》に取っていった、あれはどうしたね。結果は分ったかい」
「あれか。あれはよく取れていたよ」
「そうか。するとあれを使って、これからどうするのか」
「どうするって。さあ……」隆夫は困った顔になった。
「どうす
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