がらッ。がらがらッ。
雑音が、またも天井裏《てんじょううら》の高声器から降ってきた。
しぶい顔をして隆夫は、又してもはねまわるぬ雑音に聞き入った。
「だめだッ」
スイッチを切る。
「いったいどこがいけないのか、見当がつかないや。どこも悪くないんだがなあ」
がっかりして、彼はとなりの図書室の長椅子《ながいす》の上にのびて、ねてしまった。
その翌日のことであった。
学校のかえりに、二宮《にのみや》と三木《みき》がついて来た。
隆夫は二人を小屋の中の金網の前につれこんだ。そして前夜からのことをくわしく説明した。
「ちょっとスイッチを入れてみないか」
二宮がいったので、「よおし」と隆夫は電源スイッチを入れた。
すると間もなく、例のがらがらッ、が始まった。だが昨夜ほど大きくはなかった。とはいうものの、他のよわい通信を聞き分けることは、とてもできないくらい雑音の強さは桁《けた》はずれに大きかった。
二宮も三木も、かわるがわるパネルの前に立って、隆夫にききながら目盛盤をまわしていろいろ調整をやってみたが、さっぱり通信の電波は受からなかった。
ただ二宮は、こんなことをいった。
「この雑音ね、どの波長のところでも聞えることは聞えるけれど、この目盛盤で5から70ぐらいの間が強く聞えて、その両側ではすこし低くなるね」
「それはそうだね。その5と70[#「70」は縦中横]の外では、急に回路のインピーダンスがふえるから、それで雑音も弱くなるのじゃないかなあ」
隆夫が意見をのべた。
「そうだろうか。しかしぼくはね、この雑音はふつうの雑音ではないような気がする。やっぱり信号電波が出ているんじゃないかなあ。しかしその電波は、鋭敏に一つの波長だけで出していないんだ。そうとう広い波長帯で、信号を放送しているんじゃないかなあ」
二宮は、かわった見方をしている。
「でもこれは雑音のようだぜ」
「ぼくもそう思う」
三木も隆夫に賛成した。
両説に分れたままで、その時は分れた。なぜならば、三人の少年たちの知識と実力とではそれを解決することができなかったからだ。
友だち二人が帰ると、隆夫は小屋の中にひとりとなったが、気が落ちつかなかった。もう一度雑音を聞いてみた。雑音にちがいないと思いながらも、妙に二宮のいった広い波長帯をもった放送かもしれないという説が気になってならなかった。そこ
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