けが来た。
そして朝の行事がいつものように始まった。食事をしてから、隆夫は学校へいった。
二宮孝作《にのみやこうさく》や四方勇治《よつかたゆうじ》がそばへやって来たので、隆夫はさっそく昨夜奇妙な受信をしたことを話して聞かせたら、二人とも「へーッ、そうかね」とびっくりしていた。
「三木《みき》はどうしたんだ。今日は姿が見えないね」
三木にこの話をしてやったら一番よろこぶだろうに。
「三木か。三木は今日学校を休むと、ぼくのところへ今朝《けさ》電話をかけて来たよ」
と、二宮がいった。
「ああ、そうか。また風邪をひいたのか」
「そうじゃない。病人が出来たといっていた」
「うちに病人? 誰が病気になったんだろう。彼が休むというからには、相当重い病気なんだろうね」
「ぼくも聞いてみたんだ。するとね、あまり外へ喋《しゃべ》ってくれるなとことわって、ちょっと話しがね、彼の姉さんのお名津《なつ》ちゃんがね、とつぜん気が変になったので、困っているんだそうな」
「へえーッ、あのお名津ちゃんがね」
「午前三時過ぎからさわいでいるんだって」
「午前三時過ぎだって」
隆夫はそれを聞くと、どきんとした。
脳波収録《のうはしゅうろく》
なぜ隆夫は、どきんとしたか。
そのわけは、それを聞いたとき、彼が知っている三木の姉|名津子《なつこ》の声が、昨日の深夜、図らずも自分の実験小屋で耳にした女の声によく似ていることに気がついたからであった。実は昨夜もあの声を聞いたとき、どうも聞きおぼえのある声だとは思ったが、それが名津子の声に似ているとまで決定的に思出すことができなかったのだ。
(ふーん。これは重大問題だぞ)
隆夫は、腹の中で、緊張した。
しかし彼は、このことを三木たちに語るのをさし控えた。それは万一ちがっていたら、かえって人さわがせになるし、殊《こと》に病人を出して家中が混乱しているところへ、新しい困惑《こんわく》を加えるのはどうかと思ったのである。
そのかわり、彼はこれを宿題として、自分ひとりで解いてみる決心をした。そして、いよいよ確実にそうと決ったら、頃合《ころあい》を見はからって三木に話してやろうと思った。
「どうして。君は急に黙ってしまったね」
二宮が、隆夫にいった。隆夫は苦笑した。
「うん。ちょっと、或ることを考えていたのでね」
「何を考えこんでいたんだい
前へ
次へ
全48ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング