リチクリと刺戟したが、歯を喰いしばって地上に坐りなおした。――どうやら此処は、大きなビルディングの地下室へ降りる石階段の下であるらしい。どうしてこれを地面と感じたのか、一向にわからない。
 不図《ふと》見ると、いつの間にして呉れたのか、左腕には白い繃帯《ほうたい》が厚く厚く巻いてあった。そして脱げた靴が片っ方だけ転がっていた。いやその傍にもう一つ黒いものが転がっていた。それは防弾チョッキだった。それには見覚えがあった。これは確か、最初地下室に忍びこんだときに、既に射殺されようとした猿使いの団員「赤毛のゴリラ」に与えて一命を救ってやったものだった。してみると……、
「うんそうだ。――僕を救い出してくれたのは、『赤毛のゴリラ』だったんだな」
「赤毛のゴリラ」だったら、もっといろいろ尋ねたいことがあったのに……。彼は昨夜の出来ごとを始め、この何日か密偵団の巣窟で起ったことをそれからそれへと、まるで継ぎはぎだらけの映画をうつし出すように想いだしたのであった。
「そういえば、たしか密書を奪ったつもりだったが、あれはどうしたろう?」
 帆村はハッと胸を躍《おど》らせながら、両手をいそがしくポケット
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