声がして、彼はドンと地上に下ろされたところで、再び意識が戻った。たいへんに冷い土の上であった。ピューピューと寒い風が吹きつけるので、彼はワナワナと慄えだした。
「さあ、もう安全なところまで来ましたよ、帆村さん」そういって怪漢は、帆村の破れた服をソッと合わせながら、
「さあ、それでは私はお暇《いとま》しますよ。では」
「待って下さい」
 と帆村は苦痛を怺《こら》えながら叫んだ。
「き、君は誰です、僕を助けて下すって……」
「いいえ、お礼はいりませんよ。私は貴方《あなた》に助けてもらったことがあるので、ちょっと御恩がえしをしただけです。そういえばお分りでしょう」
「分らない、誰!」
「誰でもいいじゃありませんか。私はすぐ姿を隠さねばなりません。――」
「ちょ、ちょっと待って」
 と云って帆村は半身を起しかけたが、「あッ痛い」と、またもや地上にゴトリと倒れてしまった。そして昏々《こんこん》として睡ってしまった。
 それから後、どの位の時間が流れたかしれない。帆村が再び正気にかえったときにはあたりはもうかなり明るかった。彼は元気を盛りかえして身を起した。激しい疼痛《とうつう》が、彼の神経をチク
前へ 次へ
全78ページ中56ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング