たその太い声は、いまや引金を引こうとする「折れた紫陽花」の精神を乱すのに充分だった。声にのまれて思わずハッとするところへ、右手が後へねじられて、手首がピーンと痺《しび》れた。ゴトリと向うの壁際で鳴ったのは彼の手首を離れて飛んでいった拳銃《ピストル》だったろう。
 一体何者だ?
 帆村が意外の出来ごとに面喰らっているところへ、怪漢は飛びこんで来た、そして彼の身体を「右足のない梟」から引離すと、そのまま肩に引き担《かつ》いで、飛鳥《ひちょう》のように室を飛び出した。そして入口の扉《ドア》をピタリと鎖《とざ》し、ピーンと鍵をかけた。
 帆村を背負った怪漢は何処へゆく?


   漫画の暗号


 怪漢の肩に担がれた探偵帆村は、多量の出血のために頭がボンヤリしていた。ときどき頭が柱か壁のようなものにドカンと衝突すると、ハッと気がつくのであった。あるときは階段をガタガタ駈けのぼっているようだし、あるときは狭いトンネルのような中をすれすれに潜《くぐ》りぬけていたようだった。それ等はほんの瞬間の記憶だけで、あとはまた精神が朦朧《もうろう》としてしまって覚えがない。
「さあ、もう大丈夫!」
 そういう
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