しかし室《へや》を抜け出すには生憎《あいにく》彼の位置が入口より遠い奥にあるので、たいへん勝手が悪い。といって愚図愚図していると更《さら》に不利になるので、彼は遂に肉弾戦に訴えることにした。まず割合近くにいる「右足のない梟」を覘うことにし、射撃の間隙《かんげき》を数えながら、ここぞと思うところで、真っしぐらに突撃した。敵は帆村が手許にとびこんできたのにハッと狼狽して拳銃《ピストル》をとりなおそうとする一刹那《いつせつな》、
「エイッ、――」
と叫んで帆村はムズと相手の内懐《うちふところ》に組みついた。
「うぬ、日本人め!」
と「右足のない梟」は叫んで、大力を利用してふり放そうとするが、帆村は死を賭《と》して喰い下った。
「折れた紫陽花――早く射撃するのだ。この日本人を生きて出してはいかぬ。構《かま》わぬから僕を撃つつもりで猛射したまえ」
「そいつは……」
「いいから撃て! 祖国のためだ、われわれの名誉のためだ、早く撃て!」
敵ながら天晴《あっぱれ》なことをいった。流石《さすが》は首領として名ある人物だけのことはあった。――B首領の「折れた紫陽花」は決心をしたものか、その返事の代り
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