これは押したぐらいでは明かないことがハッキリした。彼はすっかりこの屍室に閉じこめられてしまったことに漸く気がついた。
「生き埋めか? そいつはたまらん!」
と帆村は独言《ひとりごと》を呟《つぶや》いたが、彼はそれほど慌《あわ》てているわけではなかった。彼はこの屍室にはもっと汚穢《おあい》した空気が溜っていなければならぬのに、それほどではないのを不審に思った。すると――どこかに空気抜けが明いているに違いない。彼は薄暗い天井に眼を据え、綿密に観察していった。果然――
「ああ、あそこに空気抜きがある!」
彼はとうとう部屋の一|隅《ぐう》に求めるものを発見した。どうやら身体が抜けられるらしい。それが分ると、彼は急いで樽の明いているのを集めた。そしてそれを城のように積み重ねていった。遂にそれは天井に達した。彼は雀躍《こおどり》せんばかりに喜んで、その空気の抜ける孔の中に匍《は》いこんだ。
孔の中は冷《ひ》え冷《び》えとしていた。そして彼の元気を盛りかえらせるような清浄な空気の流れがあった。彼は思わず深呼吸をくりかえしたが、それが済むと、ソロリソロリと真暗な孔の中を匍い始めるのだった。
空
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