が、さっき落したと同じ蓋《ふた》を手で取払って内部を覗《のぞ》きこんだ。
「呀ッ、これは……」
 帆村探偵は、内部を覗くと同時に思わず弾かれるように身を引いた。その樽の中には室内の異臭を作っている原因の一つがあったからである。
 それは又、危く彼が陥りかけた恐ろしい運命を物語るものでもあった。実に樽の中には、何者とも知れぬ一個の屍体《したい》が入っていたのである。いや一個だけではない、探してみると都合四個の屍体を発見することが出来た。ああ、すると此の部屋は屍体置場にひとしいのであった。
 彼は覚醒《かくせい》したことの幸運を感謝した。もうすこしで、彼自身でもって屍体を、もう一個|殖《ふ》やすところだったのである。まあよかったと思ったものの、その後で、すぐ大きな不安が押しかけて来た。
(この部屋には出口が明いているだろうか?)
 という心配だった。
 帆村は樽の傍を離れて、三十坪あまりもある其《そ》の室内をグルグルと廻りあるき、出口と思うところを尋ねて歩いたその結果、彼の探しあてたものは頑丈なコンクリートの壁ばかりだった。出口は有る筈なのであるが、隠されて見えなかったし、もし見つかっても
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