村探偵も、この花鳥絢爛《かちょうけんらん》と入り乱れた一大図譜をどう解釈してよいやら、皆目見当がつかず呆然としてその前に立ち尽すばかりだった。――この壁掛図が、部屋飾りのために掛けてあるのでもなく、また偶然そこにあったというのでもないことは極めて明瞭だった。すると、
(――この大図譜こそは、×国間諜団の使命に密接な関係のあるものでなければならぬ!)
 帆村はそれを確信した。
 では、その図譜の持つ謎をどこに発見したものだろう。彼はいままでに、いろいろと複雑な暗号にぶつかったが、こんな種類のは始めてだった。尚《なお》身近くには油断のならない敵手「右足のない梟《ふくろう》」がいて、ピストルに隙さえ見出せるならあべこべに彼の生命を脅かす位置に取代ろうと覘《ねら》っている。しかもこの場所というのが、敵にとって便利この上もない巣窟にちがいない。この上どんな殺人的仕掛があるやら分らないし、またいつ危急を聞きつけて、決死的な新手の団員が殺到してくるか分らない。それを思うと、長居は頗《すこぶ》る危険だった。
 それにも拘《かかわ》らず、折角《せっかく》目の前に望みながら、どうにも手のつけようのない謎の
前へ 次へ
全78ページ中34ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング