りゃ豪くなったことは豪くなったろうが、この建築にかけては、儂の方が豪いよ」
「梯子は建築だろうが、避雷針は電気の学問だ。それについては、私の方がずっと知っているよ。落雷するといったら、落雷することに間違いはない。夕立がやってきたとき、この梯子に登っている者を見たときは、すぐに降りるように云ってやらにゃいけない」
二人の争論を聞いていた高村町長は、横から口を出して、
「オイ松吉。北鳴さんは、博士にもなろうという方じゃないか。ちと口を慎《つつし》むがいい。それに、お前の仕事のなっとらんことは、この町で知らぬ者はないぞ。わしはこの火の見梯子をお前に請負わせるようになったと聞いて強く反対したのじゃが……」
松吉は、苦《に》がりきって、ひとりでスタスタと歩きだした。
3
翌朝から、北鳴の依頼によって、松吉の請負い仕事が始った。それは比野町の勢町《いきおいまち》というところに、高さ百尺の大櫓を二ヶ所に建てるという大仕事だった。
その工費は全部で六百円。この仕事が済めば松吉の懐中には、少なくも三百円の現金が残るはずだった。その上、北鳴の実験が済んでしまえば、この櫓に使った杉の
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