「……何を笑うんで……」
「何をって、君……」と、北鳴はまたひとしきり笑い続けたのち、「……梯子の上にある避雷針みたいなものも、松さんの仕事かネ」
「もちろん、儂がつけたんだが……あの雷避《かみなりよ》けの恰好が可笑《おか》しいかネ」
 それは背の高い杉の二本柱の天頂《てっぺん》に、まるで水牛の角を真直《まっすぐ》にのばしたような、ひどく長くて不恰好な銅の針がニューッと天に向って伸びているのだった。その銅針の下には、お銚子《ちょうし》の袴のような銅製の円筒がついていて、これが杉の丸太の上に、帽子のように嵌《はま》っていた。
「これは避雷針かい、それとも雷避けのお呪《まじな》いかい」
「もちろん、避雷針だよ。銅《あか》だって、一分もある厚いやつを使ってあるんで……。それにあの針と来たら、少し曲ってはいるが、ああいう風にだんだんと尖端《さき》の方にゆくにつれて細くするには、とても骨を折った。……それを嗤《わら》うというのは、可笑しい」
「うん、見懸けだけは、松さんが云ったとおり立派さ。だがこれでは近いうちに、この梯子の上に、きっと落雷するよ」
「冗談云っちゃいけない。四郎……さんは、そ
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