となしに、柱や壁を伝わって地中へ逃げるから、それで柱や壁が燃えだしたり、その傍にいた人畜は電撃をうけて被害を蒙るのです。私の場合は、そういった避雷装置が完全に出来ていたので、櫓の上の四尺四方ほどの板敷の上に、平気の平左《へいざ》で雨に打たれていたというわけなんですよ。これで万事お分りでしょうネ」
聞いていた人々は、聞いている間だけは北鳴の話していることがよく分った。しかし彼の話が一旦終ってしまうと、なんだか模糊《もこ》としてきて、分ったような分らぬような気持になってきた。本当に分ったのは、小学校の先生と、そして年のゆかぬ中学生ばかりだったといってもよいくらいだった。
そのときだった。外から大きな花束を抱いて入って来た二人の男女があった。
「まあ皆さん、すみませんわネ。亡くなった両親のために、こんなにお集りいただいて……」
と、二十五、六にもなろうという楚々《そそ》として立ち姿の美しい婦人が挨拶をした。筆で描いたような半月形の眉の下に、赤く泣き腫れた瞼があって、云いは云ったが、その心の切なさをギュッと噛んだ可愛い唇に辛うじて持ち耐えているといった風情《ふぜい》だった。この女こそは噂
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