予報省告示
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)而《しか》も
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)服従|乃至《ないし》無力化
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ、折り返して4字下げ]
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人暦一万九百四十六年十三月九日
本日を以て地球は原子爆弾を惹起し、大爆発は二十三時間に亘って継続した後、地球は完全にガス状と化す。
尚、このガス状地球が、果して新星雲にまで発展し得るや、それとも宇宙塵として低迷するに過ぎざるや、目下のところ予報資料不足のため推定しがたい。
人暦一万八百年
地球は今や第五氷河期の惨禍より脱するに至った。
気候は殆んど正常に復した。
氷は北緯五十度まで、及び南緯五十度まで、蔽うに過ぎない。
植物は、第五氷河期襲来前の〇・五パーセントしか存在せず、而《しか》も衰弱の徴が著しく、漸次衰滅するものと思われる。
地球は今や金属の世界である。彼ら金属の智能と意志によって、絢爛たる新地球が建設されようとしている。地球は大工事によって形状を修整された上、公転の絆を断ち切って自由軌道を採用することになろう。
これらの大工事や自力運行のため、原子エネルギーの活用は幾何級数的に増大される。が、そこに或る種の危機を孕《はら》んでいるようである。
人暦九千百十一年
遂に第五氷河期が襲来!
月は遂に海水に触れ崩壊する。その破片と塵土は地球全面を蔽い、空は暗黒と化し、続いて気温降下が始まり、それは急激に降下して行き、地表は迅速に氷河期的景観に変わる。
植物の凍死するもの数知れず、世界の交通は杜絶し、秩序はもはや保たれなくなる。さしもの世界支配族たりし可動植物たちも、その生物的弱点により生存を脅されるに至り、殊に彼らの無反省な本能主義は、このような天災に対する用意を欠いていたので、第五氷河期の襲来は彼らにとって致命的打撃である。
尚、当時残存した約三千名の地球人類は行方不明となる。彼らの多くは、地底定住の努力半ばに於て、坑道内で死滅。
人暦八千百九十四年
支配当局の厳重なる取締と警戒にも拘らず、地球外に脱飛せる地球人類の総数は、この年に於て最大記録に達し、この一年間だけで九十五万五千余名と推定される。そして脱飛に成功せず、離陸以前
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