。
火山学界はこれをほぼ予報し得たのであるが、その程度についての的中を欠き、ために世界国家の用意は十分ではなく、惨禍を前にして呆然自失の態《てい》たらく。蓋《けだ》し氷河期の災禍は世界の有する工業力とは桁ちがいに激甚なのである。
尚、不幸中の幸ともいうべきは、地球外よりの侵寇《しんこう》がこの天災のために終熄したことだ。
世界暦二千一年十三月十三日
宇宙戦争が勃発する。
オウピアン星の惑星キリキズの軍事主義民族軍団千二百万人が襲来する。侵寇の目的は、地球をその資源庫の一つとするにあり、殊に人類の家畜化という穢《きたな》い欲望を有している。地球防衛軍は大苦戦に陥る。
日本国民は文化外交の面に於いて大いに活躍し、相当の収穫あり。尚、宇宙戦争の勃発により、第三次世界戦争は休戦となり、急転直下して世界同盟成る。
世界暦二千年一月十九日
大西洋横断の旅客機と貨物機が二ヶ月前より頻々として行方不明となっていたが、その事件を調査の結果本日一大発見成る。それによれば、大西洋の赤道附近の海中に怪賊団あり、従来行方不明なりし人々は海底の船艙の如きものの中に幽閉せられて居ることが明かとなった。
当時、世界戦争中ではあったが、その戦争中の不便不利を忍んで、これらの俘囚の奪還が試みられた。しかし相手は巨大なる反撃力を有し、而もわれらの知識に全然なき武器を有して居て、奪還は不成功に終った。そして知り得たのは、怪賊団が地球人類ではなく、他の惑星の生物群の組織する遠征隊乃至探検隊らしいということだけであった。九月九日、彼らは忽然として、大西洋海中を退去し、この種の事件は跡を絶った。
世界暦千九百九十九年四月一日
第三世界戦争が勃発する。但し四月馬鹿ではない。
世界暦千九百九十年
人間の寿命は無限となし得ることに成功する。その方法は、手術法と機械代用法とで、前者は後者に比し一千倍高価である。
この成功は、世界中を歓喜せしめ、世界祭が三ヶ月連続に行われる。人類は幸福の絶頂にある。
世界暦千九百八十年
火星探検は不成功に終る。火星上陸は絶対に不可能と決定される。蓋し、火星上空にある宇宙塵の妨害によるものと思われる。
なお、火星には生物はなく、植物は繁茂しているが、下等のものばかりで、火星は一路衰滅に直進せることが判明し、永い間のお伽噺《とぎばなし》が
前へ
次へ
全4ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング