おてん》に眺め入った。「電灯は点《つ》きませんか」
「生憎《あいにく》、この合宿じゃ、六時にならないと、点かないんだ。まだ三十分も間があるよ」
 初夏《しょか》の夕方は、五時半を廻っても、まだ大分明るかった。
「さあ、わかりませんね。こんなに分量が少くちゃ見当がつかない。薬品のようでもあり、血痕《けっこん》のようでもあり……」
 わし[#「わし」に傍点]は、グッと唾《つば》を呑みこんだ。
「もう一つ、見て貰いたいものがある」わし[#「わし」に傍点]は、新聞紙包みの中から、もう一つの品物をとりだした。「これは何かね」
「こんなもの、どっから持って来たんです」横瀬は、ピカピカ光る、その外科道具のようなものを手に取上げ、ニヤニヤ笑いだした。
「何に使う品物かね」わし[#「わし」に傍点]は、横瀬の質問には答えようとせず、同じことを、聞きかえしたのだった。
「一口に云えば――」と、わし[#「わし」に傍点]の顔をジロリと見て、「子宮鏡《しきゅうきょう》という、産婦人科の道具だね」
「よし、判った」わし[#「わし」に傍点]は、ピカピカするそれを、横瀬の手から、ひったくるようにして、元の新聞紙の中に、
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