った。その実、その旦那先生が、先に立って、一々スウィッチを外《はず》して置いたのだ。怨霊の仕業ということになると、一番|戦慄《せんりつ》を感じたのは、若い男と、例の女だ。二人とも大いに思い当るところがある。というのは、自分達が手を下して闇から闇へ送ってしまった胎児《たいじ》の怨霊のせいに違いないと思いこんでしまう。さァ、こうなると、旦那どのの計画は、いよいよ思う壺《つぼ》に嵌《はま》っていったというわけだ。探険の結果、これは怨霊の外《ほか》に、理由がつかないと決定した夜のこと、旦那どのは、夜業《やぎょう》をしている情婦《おんな》のところへ行って、遂に引導《いんどう》の言葉を渡してきた。それは、のっぴきならぬ証拠を手に入れたので、明日になったら、警察へ告発するぞと脅《おど》したのだ。情婦は、思い余《あま》って、自殺の意を決し、自分の働いている工場の熔融炉《キューポラ》に飛びこんで、ドロドロに熔《と》けた鉛《なまり》の湯の中に跡方《あとかた》もなく死んでしまった。こんどは、若い男の番だった。旦那どのは、探険隊の中に、その男を入れることを忘れなかった。若い男を、ジリジリと苦しめてゆくのが、た
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