んだ。クレーンはモートルでしか動けないんだ。このスウィッチが開いていて動く筈はない。開いているようでも何処か、電気が通うようになってるんじゃないか。よく中を開けて調べて見ろ」
 カチャカチャと音をさせて、スウィッチの硝子蓋を開いてみたが、それは普通のスウィッチが、明らかに開かれた状態になっていて、外にインチキな接続は発見せられなかった。
「たしかに、このスウィッチは開いています」政は泣き声で云った。
「よし、では念のために、クレーンの上へ昇ってみよう」わし[#「わし」に傍点]は云った。
「なに、クレーンへ昇る――」
 一同は、互《たがい》に顔を見合わせて、恐怖の色を濃《こ》くした。
「政、昇れ!」
「いやァ、救《たす》けて下さい」政は、ポロポロ泪《なみだ》を出して、喚《わめ》くのであった。
「じゃ、わし[#「わし」に傍点]が先登《せんとう》に昇るから、直ぐうしろから、ついて来い。いいかッ」
 わし[#「わし」に傍点]はそういうなり、壁際へ進んで、クレーンに攀《よ》じ昇《のぼ》る冷い鉄梯子《タラップ》へ、手をかけた。


     5


「矢張り、クレーンのスウィッチも、開いています」
 三人の男にさんざん世話をやかせ、漸《ようや》くわし[#「わし」に傍点]のあとから、クレーンの上まで担《かつ》ぎあげられた政は、モートルの横の、配電盤をひと目見ると、恐《おそ》ろしそうに、そう云った。
「そうか。確《たしか》に、それと間違《まちが》いが無けりゃ、降りることにしよう」
 わし[#「わし」に傍点]達は、また困難な鉄梯子《タラップ》を、永い時間かかって、一段一段と、下りて行った。
 下まで降りきらない裡《うち》から、残っていた連中は、クレーンの上のスウィッチが開いていたか、どうかについて、尋《たず》ねるのであった。
「政に見て貰《もら》ったがな」わし[#「わし」に傍点]は一同の顔を、ずッと見廻《みまわ》した。
「クレーンのスウィッチも開いていたよ」
「それじゃ、いよいよあのクレーンは……」そこまで云った職工の一人は、自ら恐《おそ》ろしくなって、言葉を切ってしまった。
「……電気の力で動いたのでは無い、ということになる」とわし[#「わし」に傍点]は、代りに、云った。
「誰が、動かしたんだッ」
「上って、四方《しほう》に気をつけて見たが、隠れてる人間も居なかった。なァ、源太《げ
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