密林荘事件
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)痩《や》せ型《がた》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今時|金縁《きんぶち》眼鏡を
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 密林荘で、熊井青年が自殺したという事件が、例の有名な旗田警部のところへ廻されて来た。
 この事件は、その熊井青年が青酸加里を飲んで死んだという点では明瞭であるが、その青酸加里を用意したのが当人であるか、それとも他の者であるかが明瞭でない。それからもう一つの難点は、その密林荘が密林中の一軒家であって、附近に家もなく、人の通行もあまりないところであるがため、熊井青年の死の前後の状況を証言する者が殆んど居ないことだった。それについて何かを述べ得る者は、今のところその密林荘の持主の息子である柴谷青年ただ一人が有るのみであった。この柴谷青年は、熊井と共にこの山荘に来ていた者である。
 旗田警部からの呼出しで、その柴谷青年は役所へやって来た。彼は痩《や》せ型《がた》の、顔色のどす黒い、そして今時|金縁《きんぶち》眼鏡をかけているという人物だった。
 警部は早速この青年について訊《たず》ねるところがあ
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