のであった。
故障の扇風機をしらべてみると、故障のところは、レバーの接触がよくないのだと分った。こんな故障なんか直すことは彼には、お茶の子さいさいである。
ロータリーの翼《よく》は、新造しなくてはならないので、ちょっと材料に困った。しかしそれも、木の板に、空缶《あきかん》のブリキ板を貼り、そのうえに、こわれた金具《かなぐ》の中から、いいものをよって、取付けた。すべて、一郎が商売であつめてきたものの中から、自分に都合のよいものを、自分が使うのだから、こんな都合のいいことはない。
「この商売、ナカナカよろしい」
一郎は、ひとりで、よろこんでいる。そして、何日もかかって、とうとうロータリー車の模型をつくり上げた。
「さあ、あとは、雪がふればいいのだ。雪よ早く降れ、早く降れ」
と、一郎は、童《わらべ》のように、雪の降るのを祈っていると、それから一週間ほどたって、雪が降った。天も、一郎をはげますためか、うんと雪を降らせた。東京地方には、めずらしいといわれる積雪一メートル半!
「あら、うれしい。いよいよロータリー式地下戦車の模擬試験《もぎしけん》だ!」
庭へ、例の扇風機を改造したロータリ
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