えば、今は、りっぱな国策商売である。この物資不足の折柄《おりから》、むだにすてられようとする物や、使われもせず家の中にしまいこまれた物を、買いあつめる商売だ。
 こうして、これらの物を戦争につかう新しい物にかえるのである。立派な商売であった。とうとう一郎は、車を引いて、町へ出るようになった。
「廃品は、ありませんか。こわれて役にたたないものがあったら、売ってください」
 彼は、熱心に、家々をまわっていった。
 はじめは、つらかったけれど、慣れるに従って、これは面白い商売だと思うようになった。そして或る日、扇風機《せんぷうき》のこわれたのを買いあてたときには、彼は、とびあがらんばかりに、よろこんだ。
 なぜ、彼は、そのようによろこんだのであろうか。
「すてきだ! このこわれた扇風機をなおして、それから改造するんだ。翼《よく》を、ロータリー除雪車のようになおし、それから台に車をつけると、おもしろいものが出来るぞ。廃品回収屋さんは、儲かる上に、こんなものが手にはいるなんて、いい商売だな」


   扇風戦車失敗の巻


 一郎は、扇風機を改造して、ロータリー除雪車に似たものを作ろうと決心した
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