ちゅうくう》にかかる雪の爆布[#「爆布」はママ]は、だんだんと近づいてきた。こっちからは、車体はすこしも見えない。見えるのは、ただ雪と煙りとだけであった。
 除雪車が、そばまで来て停ったので一郎は、はじめて、除雪車の構造をよく見ることが出来た。ロータリーの歯車は、ぴかぴか光っていた。雪をはじめにかきこむ鋤《すき》は、ものすごく大きくて、前へ廂《ひさし》のように出ていた。一郎は、時間のたつのも忘れて、じっと見つめていた。


   掘出した扇風機


 新潟県から帰ってきて、一郎はすっかり考えこんでしまった。除雪車が、あんなに壮観なものとは考えていなかった。そして、つよい蒸気の力を借りて、たくさんの雪が、みるみる跳《は》ねとばされていくところなどをみていると、地下戦車も、かならず出来なければならないと感じた。
「地中を、あのロータリー除雪車のもっとしっかりしたようなもので、どんどん掘っていったら、きっとうまくいくかもしれない」
 一郎は、なんとかして、そういう機械をつくってみたくて仕方がなかった。
 しかし機械をつくるには、たくさんのお金が入用《いりよう》であった。機関車一台でも、一万円
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