んが、急に新潟県へ出張することになった。
それを聞いた一郎は、ぜひ小田さんについて行《ゆ》きたいとねがった。彼は、東京育ちであったから、新潟県というところを、見たくなったのである。
それを聞いて、小田さんは、
「おい岡部、今ごろ新潟県へいっても、すこしも、おもしろいことはないよ。今は、雪ばかり降っているのだ。高田市などは、もう四、五メートルも雪が積っているという話だから、たいへんだよ」
小田さんは、一郎をつれていって、風邪《かぜ》を引かせるといけないと思い、そういった。
「ぜひ僕は、いきたいんです。小田さん、僕は、雪がそんなに降ったところを見たことがないから、ぜひみせてください。それから僕は、もう一つ、ぜひみたいものがあるんです」
「もう一つみたいものって、なにかね」
「それはねえ、ラッセル車です」
「ラッセル車?」
「つまり、鉄道線路に積っている雪をのける機関車のことです。いつだか、雑誌でみたのですよ。雪の中を、そのラッセル車が、まるい大きな盤のようなものをまわして、雪を高くはねとばしていくのです。すばらしい光景が、写真になって出ていた」
「ああ、そうか。それなら、ロータリー式
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