数の上に立っていることじゃ。数を心得ないで、かん[#「かん」に傍点]ばかりで物事を決めるような非科学的なでたらめな奴は、頼母《たのも》しくない』と、信長公は蘭丸を褒められたのが真相じゃろうと、僕はそう思うんだ」
「なあんだ。係長さんが、そう思うのですか」
「いや、本当は、きっとそうだろうと思うのだ。信長公は、科学的なえらい大将だったからね。つまり、数というものを土台にして、物事を考えるという事が、たいへん大事なことなのさ」
「いや、面白いお話を、ありがとうございました」
と、一郎は、おじぎをして、向うへ行こうとした。
すると係長さんは、大声で、それを停め、
「おいおい、岡部。お前は話の途中で向うへいっては、いけないじゃないか」
「はあ、まだ話のつづきがあるのですか」
「続があるのですかじゃないよ。ほら、あのことはどうした、君の家の防空壕のことは……いや防空壕じゃない、人間地下戦車のことは……」
「ああ、そうでしたね。こいつは、しまった。係長さんのお話が、あまりに面白かったもので、話の本筋を忘れてしまったんです」
「つまり、いいかね、一日で掘った壕の長さを三百六十五倍すると、一年間に
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