ょう》な声で呼ぶのをきいて、帆村は何とは知らずハッとした。顔をあげてみると、どうしたというのだろう、川丘みどりの顔色が真蒼《まっさお》だった。常から透《す》きとおるように白かった皮膚から、血の気《け》がすっかり引いてしまって、まるで板|硝子《ガラス》を重《かさ》ねておいて、それを覗《のぞ》きこんだような感じがした。園部は、これも青くないとは云えない顔色に、憂《う》るわしげに眉《まゆ》をひそめて、みどりの顔色をのぞきこんでいる。
「早く医者にみて貰いなさい、僕、すぐ呼んできたげるから……」と園部は、心配で心配でいても立っても居られないという様子だった。
「みどりさん、気分でも悪いのかい」
星尾助教授も競技の手を休めて言った。
「いいのよウ、直《す》ぐなおるわよ」
「だけど、……そりゃ診《み》て貰った方がいいですよ、ね、ね」と園部は今にも馳け出しそうな姿勢をするのであった。帆村は思いあたるところがあった。例の仲間のうちで、川丘みどりをスポーツ・マンの松山虎夫と、星尾助教授とで張り合っているという世間公知《せけんこうち》のかたわら、園部も実はみどりを恋しているのだという噂はチラリと聞きこん
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