先生の御意見はいかがでしょうッてね。だけど僕のことをセンセといいませんて誓ってくれなきゃ、僕やってやらんぜ」
「そんなんないわ」
「豊ちゃん、記録ーゥ」と叫ぶものがある。
「ハーイ、唯今《ただいま》」とそれには答え、それから帆村の方に向き、低い声で言った。
「あのシンチャンのお仲間、今日もお昼からきて特別室でやってなさるのよ。帆村さんも、あっちへいらっしゃらない」
 特別室というのは広間《ホール》の隣りにある長細い別室で、ここには割合にゆっくり麻雀|卓子《テーブル》が四台並べてあり、椅子にしても牌《こま》にしてもかなり上等のものを選んであり、卓子布子《テーブルクロース》に、白絹《しろぎぬ》をつかっているという贅沢《ぜいたく》さだった。帆村が入ってみると、どの台にも客がいた。一番|窓際《まどぎわ》の卓子《テーブル》に、豊ちゃんの云った「例のお仲間」の四人が、一つの卓子《テーブル》を囲んで、競技に夢中になっていた。帆村は側《かたわ》らの長椅子に身を凭《もた》せて、しばらく席が明くのを待っていなければならなかった。彼は見るともなしに、「例のお仲間」の方に顔を向けていた。
「こんなに蒸《む》し
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