のですが、その途中、星尾が捨てたところを注意してくれたんだと云ってました」
その刑事が呼びだされて、それに違いないと答え、尚《なお》、あとで報告するつもりであったが園部の懐中から、こんなものを発見したといって、長さが五六寸もあるニッケルの文鎮《ぶんちん》を提出した。園部の弁明によると、それはB駅を下りたところで店をしまいかけた夜店《よみせ》の商人から買ったのだという。
「何故、君はB駅で降りないで、一つ手前のA駅で降りたのですか」と帆村がこの時、横合いからきいてみた。
「あの晩はいやな気持になったので、星尾君とすこし歩いてみるつもりだったのです」と歯切れのよい言葉で園部は答えた。
次に念のため麻雀ガールの豊乃が訊問《じんもん》をうけることになった。いろいろと訊いているうちに豊乃は、とうとう泣き出してしまったが、最後にのべたことは、係り官の頭脳を滅茶苦茶にかき乱してしまった。
「わたしは、星尾さんがみどりさんの袂から綿を盗んだのをみました。わたしは、口惜しかったので、星尾さんの背後《うしろ》にまわって、その綿を盗んでやりました。その綿はクルクルに丸めて屑籠に捨ててしまいましたけれど、
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