をもっているのに不思議はない筈《はず》ではありませんか。毒物のことは存じません。松山が死ねばよいと思うかとおっしゃるのですか、それは私にとって悪くないことですわ。どんないい男にだって、お金で買われてゆくのでは厭《いや》です。併《しか》し、わたしは松山さんを殺した覚《おぼ》えなんかございません」
調べついでに園部を呼んできいてみた。徹頭徹尾《てっとうてつび》、彼は知らないと答えた。みどりが脱脂綿を持っていたと白状したがお前は知っているかと訊いたところ、彼は「それは嘘だ」と言って強く否定した。訊いてみると彼は月経というものについての知識にさえ乏しい少年であることが判って警部はおかしそうに笑い崩《くず》れた。星尾が脱脂綿を持っていたのを知らぬかと訊《き》いたが、これも「知らぬ」と言った。
すると附添っていた刑事が口を出した。
「この人は、星尾が綿を捨てたところを見て注意して呉れたんです。実は、私はこの人を捕えに行ったのですが、とうとう見当らず、空手《からて》で帰って来ました。ところが星尾をさがしに行った本田刑事は、星尾とこの人とが一緒に暗い田舎道を歩いていたところを発見して連れてかえった
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