り出されることになった。脱脂綿と毒物の出所《でどころ》について自白を迫ったのであったが、彼は中々思うように喋《しゃべ》らなかった。しかし警部が、物馴れた調子で彼に不利益な急所をジワジワと突いてゆくと、流石《さすが》にたまりかねたものと見えて、彼はとうとう口を開いた。それは検事たちの思いも設《もう》けぬ種類のことがらだった。
「実は、あの綿は、麻雀を打っているときに、みどりさんの袂《たもと》から盗みだしたのです。毒物については存じません」
赤くなったり青くなったりして星尾の物語るところは、満更《まんざら》嘘《うそ》であるとは思えなかった。彼はその変態性欲について大いに慚愧《ざんき》にたえぬと述べて、汗をふいた。
それで彼の嫌疑《けんぎ》は晴れたわけではなかったが、兎《と》に角《かく》、みどりに綿と毒物の事を訊問《じんもん》してみることにした。彼女は、すこし取乱している態《さま》で、昨夜彼女を連れて来た刑事に助けられつつその席についた。取調べによって彼女はこんな風に弁明した。
「わたしは昨日から……」とすこし言い淀《よど》んでいたが、「実は月経《メンス》になっていたのです。だから脱脂綿
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