ていました。鑑識係《かんしきかかり》にしらべさせたところ、例の毒物がついていたのです」
「星尾に当ってみたかね」と検事が訊いた。
「早速当ってみました。が、白状しません」
「そりゃそうだろう。星尾には松山を殺す動機がすこし薄弱《はくじゃく》すぎる」
「そうでもありませんよ、雁金さん。星尾は理科の先生です。科学的なことはお得意の筈です。それに星尾の父親というのが神戸に居ますが、これは香料問屋《こうりょうどんや》をやって、熱帯地方からいろいろな香水の原料を買いあつめては捌《さば》いているのです。阿弗利加《アフリカ》の薬種《やくしゅ》を仕入れる便利が充分あります。それから星尾は、すこし変態性欲者だという評判です。それから湯呑み茶碗をひっくりかえしたのも、兎《と》に角《かく》、彼でした。彼の犯行現場が帆村さんの眼に入らなかったのは先生|背後《うしろ》を向けていたからです」
そう云えば帆村は、星尾の牌《パイ》がよく見えるところから、そればかりに気をとめて、其の行動には余り注意をしていなかった。警部の指摘した証拠は、たしかに星尾に濃厚な嫌疑をかけてよいものだった。
そこで一同の前に星尾が引っぱ
前へ
次へ
全38ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング