つくと彼は階上にとってかえして、松山達が使っていた麻雀|卓子《テーブル》について綿密な取調べをしてみた。松山の坐っていた場所については特に注意を払い、布をひっぱったり、鋲《びょう》をはずしたり、刷毛《はけ》で埃《ほこり》をあつめて紙包をいくつも作ったりした。それから彼は卓子《テーブル》の下へ潜《くぐ》りこむと床に顔を押しつけんばかりにしてあちこち調べていたが、吸取紙《すいとりがみ》を四つに切って、四人の足の下と思われるあたりの床の上に、吸取紙《すいとりがみ》をジッと押しつけ、何物かを吸いとるようにみえたが、これも又別々の紙包にして鉛筆で記号をつけた。彼は卓子の下から出ようとして、不図《ふと》、みどりと松山の境界線にあたる卓脚《ていきゃく》の蔭に落ちていた針のない鋲の頭を見付けた。彼は注意深くピンセットでそれを拾い上げた。
それがすむと、帆村探偵は、牌《こま》を一個一個とりあげては、仔細《しさい》に観察していた。
そこへ判検事や捜査課の一行が到着したので牌の調べは一応やめて、一行を案内して屍体のある室へ行った。早速、警察医の手で診察がおこなわれた結果、中毒死であることが明瞭《めいりょ
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