ゃが、もちろん時限以内のすこぶる短時間で艦外へ抜け出るようになっていること、それからこのゴムは爆弾で初めに穴は明《あ》くが、爆弾が通り抜けると直ちに収縮《しゅうしゅく》して穴をふさぐから水を吸い込む余裕のないこと、この二点についてわしはちょっと苦心をしたよ」
博士は、かすかに溜息《ためいき》をついた。大統領閣下は、嵐のような長大息《ちょうたいそく》をした。
「舷側《げんそく》を狙う砲弾や魚雷も、同じことに、ゴム蒲団の中でぐるっと方向をかえて、鋼鉄の艦体の外をぐるっと廻って、艦底から海底へ落ちる。今舷側を切って見せてやるよ」
おどろいた構造の軍艦である。瞠目《どうもく》するアメリカ人を尻目に、博士は、こんどは電気メスをとって、舷側をぴちぴちごしごしと切り始めた。
舷側は、張板《はりいた》が二つに割れるように見事に切れた。しかし、あまり切れすぎて、吃水《きっすい》以下まで裂《さ》けてしまったものだから、待っていましたとばかり海水がどんどん艦内へ突入してくる有様だった。
「いや、そんなものに愕かなくてもよろしい。これ、わしの大事な説明を聞くんだ、ルーズベルト君」
「そうだ。ここが重要な
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