どうも夢の話だというのに、あまり詳しく話をしすぎたようで、さぞ退屈だったろうと思う。要は、乃公《おれ》のみた夢というのが、いかにはっきりとしたものであり、そして不思議な現象を持っているかということを理解して貰いたかったのであった。
乃公の夢は、以上の話だけで仕舞いではない。これからいよいよ、夢のミステリーについてお話したいと思うんだ。これから喋るところのものは、ぜひ聞いて貰いたいと思うのだよ。
さてそれから幾日経ってのことか忘れたがね、乃公はまたもう一つの夢を見たのだ。
――長い廊下をふらふらと歩いている……というところで気がついたのだ。
――相変らず長い廊下だ。天井も壁も黄色でね、……
「ああ、いつかこの廊下へ来たことがある!」乃公はすぐ気がついた。それに気がつくと、いけないことに、途端にもう一つのことに気がついたのだった。
「……ああ、乃公は夢を見ているんだ、いま夢を見ているんだな」
と――。
――乃公は努めて、なるべくこの前のときと同じ歩きぶりで、その廊下を歩いていった。忠実に同じような歩きぶりを示さないと、折角の夢が破れるといけないと思ったから……。
やっ
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