それにしても彼らのいっせいに亡ぶべき時がもう十数日に迫っているぞという私の警告文が、新聞紙上にともかくも掲載せられたのを読んだとき、彼らはむしょうに腹だたしくもなったのだろう。
しかし私は充分これを学理上からも説いたつもりだ。通俗記事にもして十三種の出版物にもした。大学の講堂で立会い演説にもでたのである。だがそこには嘲笑と雑言の声のみ多くしてしんみりと理解をしてくれる者がなかった。ことに遺憾なのは先輩にあたる斯界の大家連中の浅薄な臆断である。その日のことは忘れもしない。かねての自分からの申込みによって首都の××大学の物理学講堂で第一回の『世界崩壊接近論』の講演を行なうこととなった。講演に先立ってかなり猛烈な中止勧告を受けたが、私は期するところがあるために断然とこれをしりぞけて出演した。その日の講演の主点は次のようであった。
*
今日《こんにち》ここに浅学韮才をもかえりみず学界のそれぞれの権威者大家の方々の前に立ちまして『世界崩壊接近論』と題しましてご清聴を願うにいたりましたことは、わたくしのもっとも光栄とするところでございます。
私は本論にはいるに先だちま
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