地球以外の不思議な遊星に棲む見知らぬ人からの放送遺言状の言葉が恐ろしい呪いの「二秒、一……」という数字にこめて聴えたと思ったらパタリととだえた。彼はものすごい緊張をもって、これにつづく音響を、たとえそれがいかに小さくとも聴きのがすまいと、長い円錐のように尖りきった全身の神経を聴覚にあつめた。
「カリ、カリ、ガッ、ガッ、ジジ、カリッ……」
 さてはやったな。あの男をのせた遊星は霧のごとくに飛び散ったことであろう。反対派の教授たちは……。群衆は……。
 と考えた次の瞬間である。
 その瞬間の出来事である。
 わが天野祐吉は怖ろしい光り物を見た。と思ったら彼の頭上にあたる棟木がまっ二つに破れて彼に蔽いかぶさった。ガスタンクの爆発と十二階が倒れるような音響と家鳴り振動。バリバリと何ものとも知れず降りかかる。
 と思ったら祐吉が恐ろしい呻きを発した。それと同時に彼の背後から下肢へかけて焼けつくような激しい痛みをおぼえたが、なおさまざまの小片がパラパラと眼前に飛んでくるのがわかった。
 咄嗟に彼は気がついた。
「しまった!」と彼は叫んだつもりであった。
 遺言を放送した男の棲んでいた遊星が崩壊した
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