のでことは終ったと思ったのは大間違いだった。激烈なる加速度的崩壊力はついに停止するところを知らず、かの遊星の崩壊によって生じた無限の力はさらに他の遊星に波及し、その遊星をも一瞬にして破壊四散せしめ、いっそうの勢いをえてそれからさらに……おお宇宙は滅亡する。大宇宙はことごとく崩壊しさるのだ。大宇宙が隕石一個もあまさずやきつくし、蒸発しつくさなければこの恐ろしい崩壊はおさまらないであろう。
 なかば失われた彼の意識は空の大きなガラス瓶の中をのぞいたときのように塵一本もうかがえぬような透明さと静けさにかえってゆく大宇宙の姿を脳裏に描いてみるとともに、残る半分の意識も永遠に死んでしまった。

          *

 その翌朝の東京の諸新聞紙には、いずれも初号活字で「無許可で超短長波の無線電話放送をやっていた男」が昨夜ついに逓信局の手に逮捕せられたことと、「白川飛行学校の夜間飛行挙行の一機が民家に墜落して、屋根を破ったのみか天井裏でラジオ研究中の同家長男天野祐吉(二四)を惨死せしめた大椿事」という二つのニュースが、肩をならべたように第五面を賑わしていた。
 哀れな祐吉はそれを知らなかった。彼
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