から、その実験が成功したときにでてくる勢力《エネルギー》は、胸に考えてみただけで脳貧血になりそうな莫大なものです。
私はその巨大な勢力《エネルギー》が飛びだしてきたときのことを考えると慄然といたします。多分その驚くべき巨大な力は簡単に人類に操縦されはしないでしょう。
私は想像します。おおそれはもっとも恐ろしき出来事の端緒となることでしょう。かくも短い時間のうちにかくも小さい空間に発生せられた巨大なる勢力《エネルギー》は人力を超越し、人意を踏みにじって、そこに現われてくるものは第二次の原子変成現象、第三次の原子変成現象、それからまた第四次、第五次と引きつづいて起り、とめどもなく膨脹拡大する原子変成《アトミックトランスフォーメーション》が数万の雷鳴と地震と旋風とを同時にこの世界に打ちつけ、その結果、衝突と灼熱と崩壊と蒸発と飛散とが一時に生じて瞬《またた》くうちにこのなつかしきわれらをのせている球形の世界を破滅消滅しさってしまうことであろうと信じます。
*
私の講演がこのところまで進んできたとき、会場の前列に坐っていたチロリウム製造実験を専攻する教授連はいっせい
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