のかということを考えてみますのには、これはじつに勢力《エネルギー》に変換せられることがわかりました。これは相対性原理から説明のつくことで、すべて物の重さというものは、電力や機械力とおなじように、ある量の仕事をすることができる力、すなわちこのところでいう勢力《エネルギー》に変成せられるものであるということがわかりました。
 これを計算してみますと、一グラムの水素原子が全部へリウム原子になったとすると十三万四千馬力で一時間ひっぱるほどのとても素晴らしく大きな電力になります。たった一グラムの水素をヘリウムに変成したばかりで特急列車が七十組同時に動くのですから大変な力ができるわけになります。
 この怖るべき事実から出発して、こんどおこなわれようとする実験――酸素をチロリウムに変成するときには、たった一グラムの酸素を蚤の眼玉ほどのチロリウムになおすために発生する力は、水素をヘリウムに直した場合の約十万倍であって、馬力にすると百三十億馬力となって私らでは到底想像することのできない悪魔のような巨大な力です。ことに近く、ここにご列席の方々によって行なわれる実験には七千グラムの酸素をお使いになるそうです
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