ニョッキリ出ているのを発見して大騒《おおさわ》ぎになり、私は、その足の主が、きっと兄の帆村荘六だろうと考え、なんという浅ましい光景を見るものかなと思ったとき、気を失ってしまいました。――と、そこまではお話しましたっけネ。
 それから、どのくらい経《た》ったのか、私には時間の推移《すいい》がサッパリ解りませんでした。フッと気がついたときには、あの凄惨《せいさん》な小田原の隧道の上かと思いの外、身はフワリと軟《やわらか》いベッドの上に、長々と横になっているのでありました。
「ああーッ」
 私は思わず、声を放《はな》ちました。(ああ、気がついたようだ)(もう大丈夫)などという囁《ささや》きがボソボソと聞えます。ハッと気がついて周囲《まわり》をキョロキョロと見廻すと、これはどうしたというのでしょう。傍《かたわ》らに立って、こちらへ優しく笑額を向けているのは、あの悲歎《ひたん》の主《ぬし》、谷村博士の老夫人だったのです。いや駭《おどろ》きと意外とは、そればかりではありません。いまのいままで、惨死《ざんし》したとばかり思っていた兄の荘六までが、警官や手術衣《しゅじゅつぎ》の人達の肩越しに、私の方を
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