ら……」
 運転台のやや高いところに取りつけてあった探照灯がピカリと首を動かすと、なるほど線路上にフワフワと跟《よろ》めきながら東の方へ走っている二つの白い人影がクッキリ浮かび出ました。一人の方は剣を吊っているらしく、ときどきピカピカと鞘《さや》らしいものが閃《ひらめ》きます。
「居た、居た、あれだッ」と兄が叫びました。
「追跡隊はどうしたのだ。――うん、あすこの線路下に跼《うずくま》っている一隊に尋《たず》ねてみよう」
 警部さんは汗《あせ》みどろになっての指揮《しき》です。
「オーイ、どうして追駆《おいか》けないのだ。元気を出せ、元気を――」
「いま最後の一戦をやるところです。見ていて下さい。駅の方から機関車隊が出動しますから……」
「ナニ、機関車隊だって……」
 その言葉が終るか終らぬ裡《うち》に、ピピーッという警笛《けいてき》が駅の方から聞えました。オヤと思う間もなく、こっちに驀進《ばくしん》してきた一台の電気機関車、――と思ったが一台ではないのでした。二ツ、三ツ、四ツ。機関車が四つも接《つな》がって驀進してゆきます。
 なにをするのかと見ていると、上《のぼ》り線と下《くだ》り
前へ 次へ
全81ページ中57ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング