しら》べたいことが沢山あるんだ……」
「そうですネ」と医者は時計を見ながら云いました。「大分元気がおよろしいようですが、では無理をしないように、すこしずつ動くことにして下さい」
「じゃ、もう起きてもいいのですネ」
兄は嬉しそうに身体を起しました。そして両腕を体操のときのように上にあげようとして、ア痛タタと叫びました。
二人連れの怪人
兄は元気になって、谷村博士の老夫人を見舞いました。
「まア、貴郎《あなた》までとんだ目にお遭《あ》いなすってお気の毒なことです」
と老婦人は泪《なみだ》さえ浮べて云いました。
「おや、あれはどうしたのです」
兄は内扉の向うが、乱雑にとりちらかされてあるのを見て、老婦人に尋《たず》ねました。
「あれは衣服室なのです。それが貴郎、ゾロゾロ動き出して、まるで生物のように此の室を匍《は》い廻ったんです」
「ああ、あの一件ですネ。するとあの洋服はすべて先生と奥様のだったというわけですね」
老婦人は黙って肯《うなず》きました。
「いや、それですこし判って来たぞ」
「どう判ったの、兄さん」
「まア待て――」
兄はそれから庭へ下りてゆきました。警
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