ット少将は、むっとした顔付にになって、
「ハバノフさんこそ何をいいますか。われ等は十分にそれをやっている。だから昨日も説明したではありませんか。いま建設中のこの飛行島などは、世界のどこにもない秘密の大航空母艦である。しかもそれを南シナ海に造っているというのは、何を目標にしているか、よくわかっているではありませんか」
「いやリット少将。貴官はこの飛行島がたいへん御自慢のようだが、今朝わが国の専門家から来た返事によると、どうも頗《すこぶ》るインチキものだということですよ」
「なにインチキだ。この飛行島がインチキだというのですか」
 とリット少将は、怒の色をあらわして、椅子からすっくと立ちあがった。
 そのとき可愛らしい中国服の少女が、紅茶器を銀の盆にのせて、部屋に入ってきた。


   狼対熊


「おお梨花、そこへ置いておけばいいよ」
 と、リット少将は額の汗をふきながら、やさしく中国服の少女にいった。梨花は福建省生れの美しい少女で、少将の大のお気に入りの女給仕だ。
「では、ここに――」
 と、梨花は紅茶器の盆を卓子《テーブル》の上におくと、そのまま客間を出ていった。
「じ、実に怪しから
前へ 次へ
全258ページ中88ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング