なかなか出てこない。
 そのうちに、違った音色の無電が、微かな応答信号をうちはじめた。
「ホ潜十三、ホ潜十三、……」
 戦艦武蔵が呼んでいた相手がいよいよ現れたのだった。
 そこで連合艦隊の無電が、さらにスピードを加えてまた鳴りだした。こんどは長文の暗号電信であった。ホ型十三号潜水艦は、いまどこの海面に浮きあがっているのであろうか。双方のアンテナから発する無電は、刻々と熱度を加えていった。まるで美しい音楽のようだ。やがてその交信ははたとと絶えた。
 代って、再び練習艦隊旗艦須磨が呼びだされた。
 通信兵は、再び部署について、送信機の電鍵に手をかけた。
「練習艦隊旗艦須磨はここにあり!」
 すると、すぐさま本文が被《かぶ》さってきた。
「連合艦隊は、貴艦の要請によりて、只今ホ型十三号潜水艦に出動を命じたり」
 すわ潜水艦の出動!
 ホ型潜水艦といえば、わが帝国海軍が持つ最優秀の潜水艦だった。連合艦隊は、潜水艦に、そもいかなることを命じたのであろうか。それよりも、練習艦隊司令官大羽中将は何事を連合艦隊宛に頼んだのであろうか。
     ×   ×   ×
 こちらは元の軍艦明石の艦長室であ
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