めているこの飛行島が見られるというのだから、わが須磨明石二艦に乗組んでいる血の気の多い士官候補生たちにとっても、明日という日がどんなにか待たれていた。
 その時川上機関大尉は、コップの酒をぐっとのみほして、長谷部大尉にさしながら、
「おい、貴様は今から飛行島にすっかり呑まれてしまっとるようだが、なぜあんなところに飛行島をこしらえたか知っとるか。どうだ、長谷部」
 一方は九谷焼で酒をうけながら、
「ははあ、また貴様の口頭試問がはじまったな。俺は飛行島を少しも気にしていないよ。ただ築造中の飛行島を見て、ちょっと驚きたいと思っているばかりさ。それとも貴様はなにか、あの飛行島をこしらえるわけをくわしく知らにゃ許さんというのか、たかがああいう馬鹿げた無用の不時着場を、――」
 川上機関大尉はにやりと笑って、
「それ見ろ、気にしていないなんていっていながら、貴様はちゃんと飛行島のことを考えているじゃないか。無用の不時着場!(無用の)といったね」
「それはそうさ。飛行機は、ますます安全なものになり、快速になってゆく。だからあんな飛行島なんてものはいらなくなるよ。無用の長物とはあのことだ。わが国でもし
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