その人に会わせてくれ」
耳の遠い料理人は、またボーイと相談をはじめた。時々杉田をじろじろ見る。やがて、料理人は、
「それでは、あの荷物もってきた人に会わせる。その代り、何かくれるよろしいな」
「何かくれろというのか」
こんなこともあろうかと思って、杉田は腰にさげてきた巾着から、五十銭銀貨を六枚だして、料理人の掌にのせてやった。
料理人は大よろこびで、それをボーイたちと分けあった。そしてそのうちの一人、やけに背のひょろ高いボーイを指さし、
「張、あんないする。あなた、ついてゆくよろしいな」
「そうか、案内してくれるか。それはありがたい」
杉田二等水兵は、それをきいて、にわかに元気づいた。これでこそ、この飛行島へ来た甲斐があったというものだ。
しかし中国人ボーイ、張は、はたして川上機関大尉の服をあずけた主を本当に知っているのであろうか。
怪しい合宿所
張という中国人ボーイは、杉田を手招きして、先に立った。
杉田はその後について店を出た。張は共楽街の大通をすたすたと歩いていった。活動写真館の小屋がある。覗《のぞき》屋台がある。餅みたいなものを焼いて売っている店があ
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