兵は、その足ですぐ共楽街の広珍料理店にとびこんだ。
昨日、機関大尉の荷物を受取ったあの料理店である。
この杉田二等水兵の姿というのがたいへんだった。腰から下に白ズボンをはいたきり、そして胴中から上はなに一つまとっていない赤裸だった。しかし潮風にやけた体は赤銅色で、肩から二の腕へかけて隆々たる筋肉がもりあがっているという、見るからにたくましい体格であった。
このとき、店内には、客は一人もおらず、白い詰襟の上下服を着た中国人ボーイが五六名、団扇《うちわ》をつかって睡そうな顔をしているところだった。そこへ杉田二等水兵がぬっと入ってきたものだから、一同はびっくりして、玩具《おもちゃ》の人形のように椅子からとびあがった。しかし杉田の半裸体姿を見ると、なあんだという顔をして、又椅子につき団扇《うちわ》をぱたりぱたり。
「おい、ちょっとたずねるが、昨日俺がここへ来たことを覚えているだろうね」
と、杉田二等水兵は、おもいきり大きな声で叫んだ。
「……」
中国人ボーイたちはきょとんとして、互の顔を見合うばかり。日本語なんか、ちっとも分からないという風だ。
日本語のほか知らない杉田二等水兵は、は
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