両眼を閉じた。
だが一向に、太刀風が聞えてこない。提督は不思議に思って、眼を細目にひらいてみた。川上は刀をさげて、じっと立っている。斬りつける構《かまえ》ではない。
「川上機関大尉。貴下はなぜ余を斬らないのか」
川上は叱りつけるように、
「日本人は勝って情を知る。貴下はもう完全に敗けたのだ。ピストルには手が届かない。貴下は無力だ」
「なぜ斬らないのか、余には分からぬ」
「分からないでもよろしい。飛行島は私がもらいました。だが、貴下が呼びだしたはずの無電班長が出てこないのはどうしたわけか」
そういっているとき、扉がどんどんと、破れんばかりに叩かれた。扉の向こうには、大勢の声が喚いている。
「提督、スミス中尉です。今助けますから、頑張ってください」
スミス中尉が、急を知って引返してきたのであった。
そのとき、電話のベルが鳴りだした。
「提督、電話に出て下さい。そしてその電話を、無電機につなぐように命ずるのです」
提督は、川上機関大尉の命令と、今にも破壊しそうな扉の両方に気をとられて、まごまごしている。しかしついに電話に出て、川上のいいつけにより命令を発した。電話は無電機につなが
前へ
次へ
全258ページ中244ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング