飛行島を出港
同僚たちが心配していた杉田二等水兵は、その夜更《よふけ》十二時近くになってはじめて帰された。
彼が、ただ一つ残されたハンモックを天井に釣りはじめた時、その隣で寝ていた魚崎や大辻が眼をさました。
「おう、杉田、帰ってきたか。みんなが心配していたぞ」
「杉田、俺のおしゃべりのせいで、貴様が引張られたんだといって、みんなが俺をいじめやがった。そんなことはないなあ、杉田」
が、杉田は、なにも口を開こうとはしなかった。
「おい杉田。どうしたんだ。艦長に対してどう御返事をしたのだ」
杉田はハンモックの中にもぐりこんだ。そして顔を僚友の方へちょっとだけ向けて、
「おい皆。どうもすまん。俺の気のつけようが十分じゃなかったんだ。しかし皆、どうか信じていてくれ。俺だって帝国軍人だ。卑怯なことはせん。よくそれを覚えていてくれ。――もう俺は寝る」
そういって杉田二等兵は、毛布のなかに顔をうずめてしまった。
僚友たちも、それをみると、やや安堵して自分のハンモックにかえっていった。
しかしこの事件について何かの疑いをかけられている杉田二等水兵は、今宵はたして安らかに眠れるで
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