今では飛行島上には、英人以外の乗組員はただ一人もいなかった。だから彼等二人は、よしや飛行島に泳ぎついたとしても、もし島内でその姿を発見されれば、たちどころに引捉えられなければならなかった。折よく飛行島は出航準備で島内の警戒がゆるんだので、二人の隠れ場所は安全となったが、それは一時のことである。彼等の運命は、依然として風前の灯であった。
 だが日東男児は、いかなる危険をも恐れない。いかなる艱難《かんなん》も、よくこれを凌《しの》ぐのである。ことに川上機関大尉には、まだはたしおわらない大任務があった。それは飛行島の偵察だ。いやそればかりではない。彼は一命を賭して、飛行島の爆沈を計画しているのであった。この恐るべき大飛行島を、このまま祖国の近海に近づけては、たまるものではない。二十インチの巨砲群、八十台にあまる重爆機隊、そういうものの狙《ねらい》の前に、一天万乗《いってんばんじょう》の君まします帝都東京をはじめ、祖国の地を曝させてはたいへんである。一命のあらんかぎり、彼は飛行島の爆破を断行する決心だったのである。
 杉田二等水兵は、上官の後を慕ってこの飛行島に泳ぎついたが、上官のこの大決心を
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