ちんじ》また椿事
彼は、檣《マスト》の上で、たしかにこのシクラメン号の後について来る他の艦艇の気配を感じたのであった。
他の艦艇の気配!
いくら闇夜であっても、後続艦があるとないとは、すぐ分かる。後続艦があれば、第一波の騒方がちがう。そいつは耳で聞きわけるのだ。それから、またエンジンの音がかすかに聞えるし、逆風のときは、むっとした熱気さえ感じるのだ。
水兵ジャックは、今たしかにこれを感じた。殿艦シクラメン号の後に、いつ他の艦艇がついたのであろう。
彼は檣を下りて艦橋にとびこむと、すぐこの話を班長の兵曹にした。
「班長、おかしいではありませんか。本艦は殿艦であるのに、あとに、もう一つ殿艦がついてきます」
「なんだ、本艦のあとについてくる艦があるというのかい。そんな馬鹿なことがあってたまるかい。貴様、寝ぼけているんだろう」
「まったくですよ。私はちゃんと二つの大きな眼をあいていますし、二つの大きな耳をおったてていますよ。この眼で見、この耳で聞いたのです」
「何をいってやがる。この梟《ふくろう》野郎めが――」
班長は、てんでうけつけない。
梟野郎めといわれて、水兵ジャックは
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